小さき人であった頃

 子供の頃、僕は何になりたかったのだろう。思い出そうとするけど、思い出せない。そんなものあっただろうか? 中学生の頃、立花隆さんや中村桂子さんの本を読んで、分子生物学に興味を抱いた記憶はある。DNA、RNAセントラルドグマ、二重螺旋構造・・・生命の神秘に魅かれていたのだろうか? でも、僕は親の勧めに従うまま全く違う学部に進学し、いつしかそんなことも忘れてしまった。結局、出身学部とは何の関係も無く、ただ内定をいただけた会社に就職し、最下層プログラマーみたいなことをやっている現在。仕事は仕事であって、それ以上でもそれ以下でもないけれど、イマの僕にとってはその比重は大きくて(といいうよりも、仕事以外に何も持たない事が一番の問題なのだけど)、精神状態すら左右する。
 イマの僕は何になりたいのかも分からなくて、小さい頃の記憶を思い起こそうとしてる。思春期以降は現在が全てであるような生き方しかしてこなかったから、たぶん何も無いような気がする。小さき人であった僕は何を願っていただろうか? こんなことを考えること自体が現実からの逃避かもしれないと思いながら、そんなことを想う。