湯浅誠さん

http://www.videonews.com
■マル激トーク・オン・ディマンド 第339回 [2007年9月27日収録]
タイトル:貧困は自己責任でいいのか
ゲスト:湯浅誠氏(NPO自立生活サポートセンター・もやい事務局長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_339_pre.asx

 先月末、厚生労働省がいわゆるネットカフェ難民といわれる人々の実態調査を発表
した。それによると、全国に5400人余りの人々が、住居を持たず、ネットカフェなど
で寝泊りをしているという。
 しかし、ホームレスや生活困窮者の支援を10年以上にわたり行ってきた湯浅誠氏は、
彼らは決して新しいタイプの貧困層ではなく、従来からのホームレスと同じ状態の人
々だと語る。湯浅氏はまた、彼らは24時間営業のファーストフード店や公園、友人宅
などを点々としながら、寝泊まりしており、ネットカフェを調査しただけでは全体像
は把握できないとも言う。
 住民票がある地域と居住地域が一致せず、行政の福祉からこぼれ落ちている点では、
ネットカフェ難民もホームレスとなんら変わらない。厚生省の調査では、 20代と50
代が多いという結果が出ていたが、湯浅氏が代表を務めるNPOに助けを求めて訪ね
てくるのは、30代がもっとも多く、夫婦や親子、姉妹兄弟がいっしょにというケース
も稀ではないと言う。つまり、従来は、自助努力でなんとかなった人々が、現在は、
容易に貧困に陥りやすく、貧困層として固定してしまう傾向が強くなっていると湯浅
氏は指摘する。
 一億総中流社会と言われて久しい日本だが、すでにOECD諸国の中では、米国に
次ぐ格差社会に変貌している現実が、データで明らかになってきている。米国流の新
自由主義的な経済政策を導入し、民営化と自由化を進めた結果、米国と同様に中流
庭が没落し、貧富の格差が進んでいる。
 しかし、財界などを中心に相変わらず「格差を容認しないと国力が落ちる」という
理由から「貧困を自己責任」とする主張する向きも根強く残る。こうした風潮に対し
て湯浅氏は、貧困に陥った人には「教育課程からの排除」、「企業福祉からの排除」、
「家庭福祉からの排除」、「公的福祉からの排除」、「自分自身からの排除」と5つ
の排除が複合的に作用しているため、貧困から立ち直ることが非常に困難であると、
自らの経験を元に語る。
 神保哲生に代わり、アメリカの貧困問題の取材を精力的に続ける気鋭のジャーナリ
スト堤未果を司会に迎え、貧困の現場で奮闘する湯浅氏とともに、日本の貧困の現状
とその原因や背景を考えた。