ロバート・ハリス

 僕は、下記に抜粋したエピローグをなんどとなく読み返すだろう。もし、自分と似た誰かに、本を一冊プレゼントするとしたら、僕は迷わずこの本を手渡すだろう。すべての放浪する人々へ送られた一冊。

エグザイルス (講談社+α文庫)

エグザイルス (講談社+α文庫)

 僕に言えることは、「自分の道を行く」ということは、実際に旅に出るか出ないかという問題ではないということだ。自分らしく生きたいと願い、行動に出た人間は、みなその時点で、地図も海図も羅針盤も役に立たない、長い航海へとすでに旅立っているのだと思う。要はそんなことを願い、行動に出られるかどうかとういうことではないだろうか。
 まず一歩、踏み出すことだ、と僕は思う。その第一歩からすべての道は始まる。そして旅の途中、忘れてはならないのは、「自分らしさ」を、現実の社会で生きる大変さのせいで歪ませたりしてはいけないということだ。
 人間にはすべて、自由に、溌剌と、情熱的に、つまり自分らしく生きる権利があるんだ、と僕は信じてきた。この思いが僕を常に支えてくれたし、砂漠の中、闇の中での道標になってくれた。
 もうひとつ言えることは、どこにいようが、何をしようが、自分に忠実に生きていく者には運が味方してくれる、そして同じようなハートを持った仲間が集まってくるということだ。つまり「自分の道を行く」という旅は、決して苦悩だらけでも、孤独なものでもないということだ。
 人はよく未来に対して不安になるが、誰にもはかり知ることのできない、未知なるものに不安になってもしかたがないと思う。当たり前のことだが絶対とか保証とかいったものは、こと人生に関しては存在しないからだ。そして存在しないからこそ、自分次第でどんな人生だって手に入れられるのだ。時には不安になることもあるが、何年生きてきても自分にどんな未来が待っているのかとわくわくする。僕らしい生き方がどんな形になって僕の顔に現れ、僕らしく生きていることがどんな運命を呼び寄せるのかと、不安と期待の入り混じった、じっとしていられない気持ちにいつもなる。僕の仲間達もそんあ不安と期待を胸に感じながら、さまざまな可能性から自分に合った道を選択し、がむしゃらに突き進んでいったのだと思う。


ロバート・ハリス 2000『エグザイルス―すべての旅はじぶんとつながっている』講談社 317-318頁

 僕はこれからもずっと旅を続けていくつもりだ。時にはやりたくないことをやったり、ポジティブなエネルギーが湧いてこなくてダウンしてしまうこともあるだろうが、どんな時でも自分と対話し、ありのままの自分を受け入れ、「生きる」という旅を続けて生きたいと思っている。
 僕にとっての「自分」とはとてもよく知っている存在であり、誰よりも知らない存在でもある。「生きる」という旅を通して、僕はいつまでも自分を探し求め、未知なる自分を発見し続けて生きたい。
 なぜなら、それが僕にとっていちばん「楽しい」ことだからだ。


ロバート・ハリス 2000『エグザイルス―すべての旅はじぶんとつながっている』講談社 319頁