症状

THE BIG ISSUE JAPAN 56号『和樹と環のひきこもり社会論』(斉藤環)より抜粋

 「必然性」において、義務と欲望は一致しています。必然性のもとで行動している人に、「なぜあなたはそれをするのか?」と訊ねても、たぶんうまく答えられないでしょう。逆に、理由が説明できる行動には必然性はありません。「理由」が言葉で説明できるようなものであるなら、必ず「それをしない理由」も説明可能であるはずだからです。このように説明は必然性を破壊してしまいます。

 「自分はこれをするしかない」という確信を「症状」と呼ぶことにしています。症状には根拠がありません。だから症状は説明できません。

 解釈されない症状は、患者にとって必然的なものとして理解されてしまいます。しかし、精神分析のやりとりの中で、症状の解釈が適切になされると、その症状は説明可能なものとなり、「必然性」を失ってしまうのです。