僕がここにいるのは

 両親。僕を育ててくれて、学校に通わせてくれた。当然のことのように思っていたことだけど、僕には出来そうにもない。たぶん、僕は結婚しないだろうし、子供を育てることもないだろう。
 大学時代の恩師。努力することを認めてくれた初めての人。先生が見てくれている。そのことだけで僕は努力することが出来た。研究室生活は、長い学生生活の中での一番貴重な時間になった。
 最初の会社の同僚、先輩、上司、社長。今思い起こせば、人にはとても恵まれていた。社会人一年目の生活ほど充実して楽しい時期はなかった。それから7月まで一緒に働いていた同僚、先輩。過酷な環境の中でも、いつも周囲を明るくし、皆を気遣う方だった。僕は途中でリタイアしてしまったけれど、彼らと一緒に働くことができたことは、とても楽しいことでもあった。
 そして、主治医の先生。僕が東京に来てからずっと診て頂いている。先生にとって僕の存在は、多くの患者さんの一人なのだろうけど、僕にとっては唯一の存在。僕のことを心配してくださっている。僕はそのことだけで十分。先生にはあまり心配かけたくない。
 そう、僕が一人でここにいるのではない。こうして、ここに立っていられるのは数多くの人たちのお陰なのだ。それだけは絶対に揺るがない真実。唯一、断言できること。そのことは、どれだけ感謝しても、感謝しきれるものではない。